江渡 明子さん
◆家族構成
江渡さん タケさん
◆暮らし方
2拠点居住(勝浦⇄東京)
◆2拠点居住を開始した年
2020年7月〜
− まず、簡単なプロフィールを教えていただけますか?
江渡さん:
江渡明子(えとあきこ)、東京都出身です。東京では旅行会社に勤めていて、勤続30年以上同じ会社でガッツリ働いています。
− 現在は、東京と勝浦での2拠点居住をされているということですが、そのきっかけを教えてください。
江渡さん:
勤めている旅行会社が、館山市のワンルームマンションの1部屋を保養所のような形で物件所有していて、そこを拠点にゴルフや海水浴に行ったりとよく活用していたんです。ただ、会社がその拠点をいつの間にか手放してしまっていて、遊びに行く場所がなくなっちゃったんですね。最初は代わりになるような物件を館山で探していたんですが、候補が少な過ぎてエリアを広げて探さないとなかなか見つからない状態だったんです。加えて、コロナ禍で旅行会社の仕事がピタリと止まった時期だったので、「時間もたっぷりあるし」ということで物件探しを本気でやり始めました。
そこで房総エリア全体で探していったところ、勝浦市の松野という「つるんつるん温泉」の近くにいい感じの物件かつ値段も手頃なものがあったので、見に行って。そんな形で勝浦とのご縁がスタートしました。
結果的にゴルフの拠点としても館山より勝浦の方が良かったです!館山だと少しだけしかゴルフ場がないんですけど、勝浦は茂原まで近いのでゴルフ場の数も星の数ほどあるので、私のライフスタイルにも合っていました。
− 勝浦に住んでみて感じた良かった点や今までと違った変化などはありましたか?
江渡さん:
食べ物がすごく美味しいです。私は特に海の幸が好きなのでうれしいですね。夏には伊勢海老を食べれたり、東京ではまず手に入らないものがこちらだと漁港が近いのもあってシーズンには必ず手に入ったりと食べ物の魅力は大きいです。
あと、私はサーフィンはやらないんですけど、海が近いだけでも気分的にリフレッシュになりますね。松野の方って海から少し高いところになるんですが、周りの景色や里山の田んぼの景色もすごく綺麗で、自然がこんなに溢れていることにとても魅力を感じています。
− 生活拠点として勝浦で暮らし始めると、都会と比べて自然の豊かさを実感する機会が多いですよね。
江渡さん:
そうですね。東京にいると季節を感じることはあまりなくて、例えば食べ物なんかもスーパーに一年中同じものが置いてありますよね。 それが田舎に来ると、春になればこういう花が咲くとか、冬になれば直売所に大根が山積みになってるとか。これまで自分の生活の中に季節を感じて生きるということが全くなかったので、そういうのにとても驚きましたね。
− 勝浦に旅行ではなく「居住」しようと思ったきっかけはなんですか?
江渡さん:
すごくのんびりできるというのも理由としてはありますが、やっぱり東京との距離がそれほど遠くなく、気軽に行ける距離感が決め手でしたね。東京から1時間半でこれほど静かな環境かつ、そこまで田舎でもなくて、遊ぶところもあって。スーパーやコンビニも普通にあって生活にも困らないし、交通の便もいい。ちょっとした週末の気晴らしもできて、居住する環境的にもベストなポジションなのかなと思いました。
− これから勝浦に2拠点居住を希望される方に伝えたいことやおすすめできるポイントはありますか?
江渡さん:
都会には都会の良さがあると思いますが、それを深く考えずに来れる距離感と週末でオンオフの切り替えができるところですね。
都会にいても土日はもちろんやってくるんですけど、鳥のさえずりや風の音、自然の音しか聞こえないようなところは、東京にはなかなかないので、そこにガラッとスイッチを切り替えられるのがすごくいいなと思います。
最初の頃は、金曜日の夜に仕事が終わってから1時間半かけて勝浦に来て土曜日に1泊して、って短いなと思っていたんですけど、気持ちがものすごくリセットされるんですよね。どんなに忙しくても来てしまえばリフレッシュできて、本当に仕事のストレスとか全部なくなっちゃうんです。それってすごく大事な時間だなと感じるようになりました。
− 都会で暮らしていると、金曜日に疲れて帰ってきたら土日はそのまま家でじっとしてしまいそうですもんね。
江渡さん:
そうそうそう!疲れから1日中ゴロゴロしちゃって(笑)
だから、逆に頑張って来てしまえば、すごく静かな時間が得られるのは本当に大きいなと思います。
2拠点居住を始めて3年が経つんですけど、勝浦に拠点を持ったからといってゴルフ以外にどこかに行きまくったかと言ったら全然そんなことはないんです。それでも、のんびりする時間が最大の楽しみという感じなんですよ。外でコーヒーでも飲んで、田んぼのカエルの鳴き声を聞いているだけでもすごくリフレッシュされる。 それが1番いいところじゃないですかね。
− 江渡さんは勝浦で活動をされているとのことですが、どんな活動をされているんでしょうか?
江渡さん:
勝浦周辺を車で走っていると、空き家がものすごく多いんですよ。私は元々「家」に興味があって、売ってもいない放置されている古民家とかを見ると勿体無いなと思っちゃうんですよね。そこで「勝浦に住んでみたいけど、家で失敗したくない」と思っている人達を、うまく空き家と繋ぎ合わせることができないかな、と漠然と思っていたんです。
そんなとき、一昨年の10月に「創業塾」を勝浦市の商工会が開催してるという話を友達から聞いて参加してみたんですね。その時点ではアイデアも漠然としたものしかなかったんですけど、創業塾に参加したら、パン屋をやりたい方や、介護タクシーをやりたい方とか、いろんな方がいて。そういう人達と話したり、5回くらい講座を受けるうちにアイデアが固まってきて、いきなり空き家を勝手にリノベーションして売るというのはリスクが高すぎるので、シェアハウスを作ってみたらどうかと閃いたんです。アパートはたくさんあるけどシェアハウスは勝浦にそんなにないから面白いかもしれないって。
思い立ったらすぐ行動で、一昨年の12月にいい物件と巡り会えたのもあって、約半年準備をしてシェアハウスを立ち上げました。私のように縁あって勝浦で楽しい時間を持てるようになる人を1人でも増やしたいなと思いながら活動しています。
− こちらのシェアハウスの特徴や強みを教えていただけますか?
江渡さん:
こういった田舎のアパートは家賃がものすごく高いわけではないので、わざわざシェアハウスを選んでもらうためには何か特徴がないといけないとは考えていました。それでシェアハウスの特徴として、「猫」をテーマにしています。もちろん、元々猫を飼っている人は一緒にご入居していただいても構いませんし、居住してくれる方が揃った時点で「ハウス猫」という形で、この物件に属している猫ちゃんを皆で飼育するというスタイルをシェアハウスの特徴にしています。
− 私も猫が好きなんですが、住んでいるマンションでは飼えないです。ペットOKの物件は少ないので、そのコンセプトはすごく素敵だなと思いました。
− 実際に物件の整備をしてみて大変なことはありましたか?
江渡さん:
経費を安く抑えたかったので半分はプロにお願いして、もう半分くらいは私とパートナーでDIYしたんですけど、めちゃくちゃ大変でした。基本的に土日しか動けない状態ということもありましたが、壁紙を貼ったり壁を塗ったり、庭に重たい石を入れたりで腰もボロボロになるし、予定よりもかなり時間がかかりました。
でも、リフォームって専門知識がなければ無理だろうとか、もう歳だからそんなことできないよとか思ってる方もいっぱいいると思うんですけど、今はYouTubeで調べればやり方も分かるし、何より自分達で始めたものだから自己流でOKという気持ちで、どんどん進めていけば意外とできちゃって楽しかったですね。
▶︎開業までの様子の写真は 「猫日和」Instagram にてご覧いただけます。
− 費用面でもやはり大変でしたか?
江渡さん:
そうですね。物件自体すごく古く、残置物もそのままの条件で安くしていただいたので最初は撤去に2トラック6往復となり(笑)。内装もどこまで直すかが自分のこだわりとの兼ね合いでした。決して住めない状態ではなかったんですが、「こんなシェアハウスにしたいな」というイメージがあったので、直すべきところはしっかり直して、床などもすべて貼り直したりしているうちに費用は結構かかっちゃいましたね。
− シェアハウス自体の外観や内装のコンセプトなどは、アイデアを閃いた時点で決まっていたんですか?
江渡さん:
今住んでいる松野の隣に私達と同世代のご夫婦が2拠点生活をしていて、そのお友達とも仲良くさせていただいているのですが、その方々にシェアハウスのアイデアを話したら「和モダンみたいなコンセプトがいいんじゃないか」と仰っていて。それで、元々あった和風のいい部分は敢えて残しつつ、完全な和風だと今の若い人にはあまり受けないと思ったので北欧っぽい家具や椅子を入れたりしました。
ひとつ余談で、元々いい建具がついていたんですけど、その時点では和モダンのコンセプトが決まってなかったから残置物撤去の際に捨てちゃったんですよ。後になってすごい惜しいことしたなって思って。でも障子を残す時点で建具はやっぱり必要だからって結局、もう1回買い直しました。リフォーム会社の社長さんが「なんでそんなボロボロの建具いるの?」と聞いてきたから、「だって障子に合わせたらかっこいいじゃないですか」って答えたんです。そしたら面白がって「いい建具見つけたよ」ってどっかの現場から建具をさらに持ってきてくれて(笑)。せっかくなので倉庫の扉に活用させていただいてます(笑)。
− 内装はいろんな人が関わってくれてできてるんですね。
江渡さん:
リフォームしてくださった社長さんは、3年前に松野の家を買ったときに壁紙やトイレ交換を施工してくださったのがご縁で、今は友達のように親しくさせていただいています。リフォームしてもらいつつ飲みに連れていっていただいたり、奥さんと一緒にゴルフをしたり、地元のお友達を紹介してくださったりと2拠点で暮らしている宙ぶらりんな私達をすごく可愛がってくださって本当に良くしてもらっています。
− 移住を考えている人にとって知らない土地に行くのは怖い部分もありますが、そういったリフォームの社長さんのように声をかけてくれる人は都会よりも多く感じますか?
江渡さん:
もちろん、こっちからも歩み寄っていかなきゃいけないとは思うので、例えばご夫婦で来て、2人だけで別荘を楽しんで帰って•••、だけだと何も広がらないと思うんですけど、自分からどうやって入っていって繋がりが持てるかが大事というか。地元にお友達ができると我然楽しくなります。何か頼むときにも安心感があるし。
その社長さんで言えば、リフォームのことで相談すると「鍵付けといてくれたらあとはやっとくから」みたいな感じで。そういう親切な方がたくさんいらっしゃるから、積極的に関わっていくのが大事ですね。自分の必要なときだけお世話になるんじゃなくて、普段から顔を出して他愛のない話でもして繋がっていければ広がっていくし楽しくなると思います。
− 今後、2拠点居住を考える人は江渡さんのインタビューを見て繋がっていくかもしれませんね。
江渡さん:
そうだとうれしいですね。シェアハウスにも幸い興味を持ってくださる方がいらっしゃって、Instagramを通じてその後もメッセージでご連絡いただく方もいるし、以前まで入っていた武大生の女の子達も、今は東京で仕事をしているから「今度新橋の飲み屋でも行きましょうか」みたいな感じで、その後も繋がっていたりしますね。
− 事業のことをもう少し深掘りしたいなと思いますが、アパートではなくシェアハウスにしたのはどうしてですか?
江渡さん:
下世話な話ですが、アパートだと初期投資が大きすぎて。シェアハウスなら一軒家からスタートできるのでハードルがそれほど高くなかったという理由がありますね。
− 不動産業・リフォーム業の経験や、資格の所持なども特になかったんですよね?
江渡さん:
もちろん、賃貸業なんてど素人なのでどうやって契約者を募ればいいかもわからないし、資格も何もない状態でしたね。本当に古民家に惹かれて完全な飛び込みです。空き家リノベーションには元々興味はあったんですけど、それも”興味がある”程度でした。
− 大変な苦労があって出来上がったんですね。今後このシェアハウスはどういう場所になっていってほしいですか?
江渡さん:
大学生の方が利用してくれるのももちろん嬉しいんですけど、誰も知り合いのいないところにひとりで来て「それじゃ不安だな」と思っている方にこのシェアハウスを使ってもらえたらいいなと思いますね。このシェアハウスが満室になっていれば少なくとも6人の友達・知り合いは必ずいることになるので、ひとりで来ても寂しく思わないようなシェアハウスになったらいいなと思います。
− このシェアハウスは女性限定なんですよね?
江渡さん:
はい。たった6部屋なので、今のところ女性限定で考えています。例えば、2拠点の方でもいいですし、Wi-Fiも入っているのでリモートワーカーの方でも、週末だけの利用でも、おひとりで完全移住で来ても寂しくない生活のスタートができます。年齢の縛りも考えていないので、若い人からご年配の方でも歓迎です。私の知人にもご主人がもう亡くなっていて、「東京にいてもしょうがないしな」みたいな人もいるんですが、そういう方も寂しくないと思うんですよね。むしろ、若い人と一緒にいて刺激になったり、話がいろいろできたりするのも楽しいんじゃないかなと思います。
− では条件は、女性で猫好きであれば誰でも?
江渡さん:
そうですね、女性で猫好きであればぜひ!
− 体験で一日住んでみるなども可能なんでしょうか?
江渡さん:
体験ももちろん考えていて、1ヶ月のお試しとかでも全然いいですし、その辺は柔軟に対応したいと思います。私もできるだけ毎週末勝浦に様子を見にいったりお掃除をしにいっているので応相談で。
住民の方同士が住みやすくなるようにできる限り対応したいと思っていますので、必要であればなんでもご相談ください。快適に住んでいただけるためのケアを続けることは当然だと思っていますので。
−勝浦に暮らしてみて不便に思う部分などはありますか?
江渡さん:
バスが早く終わってしまうところですかね。夜に飲んで帰りたいのに帰れないときが1番辛いですね(笑)。
あとは飲み屋さんが早く閉まってしまうとか。まあ、飲みたいなら都会にいろよって話なのかもしれないですけど。帰る足がないのはネックですね。
シェアハウスの物件を駅から歩いて行ける距離に選んだのはそういう面を意識したのもあって。車の免許を持っていない方や、車がないと田舎だと生きていけないんじゃないかと思っている方もいるので、駅から歩ける距離というのはメリットがすごく大きいんです。自転車くらいあれば近所のスーパーまでは買い物に行けますし。
− 勝浦といえば海や山のイメージですが、シェアハウスを敢えてそういった市街地方面で開かれた思惑はあるんでしょうか?
江渡さん:
勝浦駅が近い、高速バスのバス停がある、コンビニも歩いて行けて不便にならないなど、アクセスを重視したかったのが理由ですね。しかも、歩ける距離に海もありますしね。
− 今後の展望などはありますか?
江渡さん:
まだ妄想でしかないんですが、海の近くにシェアハウス「猫日和」とは別で、一棟貸しの宿みたいなのを開きたいですね、「海日和」という名前で。あとは、私の周りに勝浦に興味を持ってくれるゴルフ仲間が多いので、ゴルファーの人達がシミュレーターとかで遊べて前泊とかもできるような宿があったらいいなあと、「ゴルフ日和」という名前で(笑)。そんな風に何軒か広げられたらいいな•••、なんて妄想しています(笑)。海近くの物件がなかなか出てこないんですけどね。
− 東京と勝浦の2拠点居住に興味を持っている方に向けてメッセージをいただけますか?
江渡さん:
まず、2拠点を考えている人に向けて具体的な通勤のイメージを伝えると、朝7時26分発の電車に乗れば9時ちょうどに東京駅に着きます。うちの会社は9時半スタートだから全然行けちゃう。帰りは17時55分東京駅発のバスに乗ると20時には勝浦駅に帰ってこれます。
2拠点なら会社を辞めなくても大丈夫ですし、東京で働きながらも2拠点居住は全然できます。毎日の行き来は無理かもしれないですけど、週に2回の移動なら意外と大丈夫ですよってことを伝えたいですね。「移住」という言葉に縛られ過ぎるとハードルが高くなってしまうので、そんなに縛られずに気軽にチャレンジしてみてほしいなと思いますね。
− 最後に、何か伝えたいことなどあればお願いします。
江渡さん:
ご提案がひとつあって、1泊2日の勝浦移住体験ツアーみたいなものをシェアハウスを使って一緒にやりたいなと思っていて。部屋もベッドも布団もあるので、朝勝浦駅に集合してもらって、街中を案内して、シェアハウスでどんちゃんBBQでもやって、1泊してもらう体験ツアーのような。翌日帰る前に皆でディスカッションして、どういうことが不安で、どうしたら解決するのかとかも吸い上げて。最終的に移住してもらえなくても、勝浦がいい場所だったと発信してもらうことができれば、またその話を聞いた別の人が興味を持ってくれるかもしれないし。
− もし、市が公式にそういったツアーをやるとなると、まず旅行会社さんに声をかけて、ツアーのパッケージから考えるんですが…。
江渡さん:
旅行会社勤務なので任せてください。案内もできます(笑)。
− 心強いです(笑)。市としても勝浦の魅力を知ってもらえる機会が増えるのはすごくいいことだと思うので、本気で検討させていただければと思います。
江渡さん:
こちらこそ、ぜひやりたいのでお願いします。
− 江渡さん、本日はお忙しい中貴重なお時間をいただきありがとうございました。
江渡さん:
ありがとうございました!
2023年、シェアハウス「猫日和」とコラボした1泊2日の体験移住ツアーを行いました。
ご参加いただいた皆さまありがとうございました。開催レポートは以下よりご覧ください。